急に意識がなくなり、倒れてそのまま……
という印象が強い脳梗塞ですが、
じつはさまざまな症状があります。
注意深く体調を見極めることが、
早期発見のカギです。
脳梗塞になると起こる「全体症状」と「局所症状」
頭痛、めまい、動悸などを起こす「全体症状」
隠れ脳梗塞は症状が出ませんが、脳梗塞の症状は大きく分けて2つあります。
ひとつは「全体症状」で、頭痛、めまい、ふらつき、動悸などがそれにあたります。
また、高血圧も大きく影響します。
血圧が上がったとき、脳内に必要以上に血液が行き過ぎてしまうと困ります。
ですから、脳にある血管はぎゅっと収縮します。
ところが、動脈硬化があって収縮するのが遅れると、頭に血流が行き過ぎてしまい、
それで頭痛が起こります。
これは全体症状のひとつです。
逆に、血圧が下がったときに動脈硬化があると、今度は血管が拡張してくれません。
血圧が下がるということは、血液が十分に脳に行かないということ。
その状態で拡張が遅ければめまい、ふらつきが起こります。
頭が痛いという患者さんを診察し、血圧を測ると血圧がいつもと違って高いことがあります。
さらに調べていくと、頭の中に梗塞や出血があった人がかなりいます。
夜中に胸がドキドキして一晩中、まんじりともしなかった、
言いようのない不安感に襲われた、という症状が出る人もいます。
血管が詰まった場所で違う「局所症状」
もうひとつは、「局所症状」です。
これは脳梗塞によってダメージを受けた脳の部分によって、症状が異なります。
脳には物事を行うための地図があり、その領域によって受ける影響が違うのです。
局所症状には、筋力低下、運動の失調、知覚障害、冷え、
視野の欠損といった症状が見受けられます。
また、なんとなくつまずく、車の運転中に理由もなくぶつかるということもあります。
手足のしびれや、手が動かしづらく不器用になったという状況も要注意です。
ボケの原因は隠れ脳梗塞にもあった
脳の地図の中には、計算や記憶を司る領域もあります。
若いうちは脳が十分に働き、さっと計算ができ、さまざまなことを覚えることができます。
ところが、年齢を重ねるにつれて隠れ脳梗塞が起こってくると、
その働きが徐々に阻害されていくことになります。
すると、今まで簡単にできていた計算ができなくなったり、
人の顔を覚えることができなくなったりしてしまうのです。
要はボケてしまった状態です。
「年をとったのだから忘れっぽいのは仕方がない」とのんきに構えていると、
隠れ脳梗塞が進行し、ボケもひどくなることがあります。
脳の神経細胞は再生しませんが、地図の領域は広げることができるのです。
領域が広がれば、ダメージを受けた部分をフォローすることができます。
また、刺激を受けることも効果的です。
いくつになってもひきこもらず、積極的に外に出て、人と関わっておしゃべりをしてください。
<脳梗塞が起こる場所によって症状が異なる!>
前頭葉(ぜんとうよう)
運動機能の中枢、運動言語中枢、精神機能中枢がある。
脳梗塞になると起こる症状
人の名前が思い出せない、物事に興味や関心がなくなる、手足のマヒが出るなど
頭頂葉(とうちょうよう)
あらゆる感覚の中枢がある。
温冷覚、空間認識、左右認識も含まれる
脳梗塞になると起こる症状
計算がヘタになる、暗証番号が思い出せない、手探りの動作が苦手になるなど
後頭葉(こうとうよう)
視覚中枢がある。
脳梗塞になると起こる症状
階段を踏み外す、物をつかみそこなう、自分の傘がどれかわからないなど
小脳(しょうのう)
運動機能の中枢、操作記憶がある。
脳梗塞になると起こる症状
筋力の低下、ろれつが回らない、目を閉じて立っていられない、字がヘタになるなど
側頭葉(そくとうよう)
記憶、聴覚、嗅覚、感覚言語の中枢がある。
脳梗塞になると起こる症状
同じことを繰り返し言う、名前を呼ばれてもすぐに気づかない、低い小声が聞き取りにくいなど
「「隠れ脳梗塞」を見つけて脳梗塞を防ぐ より」