●ブラジルの短命村と長寿村のお話
≪肉ばかり食べている村では心筋梗塞とガンが急増≫
人は顔や体つきこそ違え、同じような体の機能を持って生まれてきます。
しかし、健康度や寿命は一様ではなく、年齢を重ねるにつれて、その差は鮮明になります。
健康なまま百歳の長寿をまっとうする人もいれば、40〜50代の中年期に生活習慣病の
合併症などで亡くなる人もいます。
この差はなぜ生まれるのでしょうか?
大きな要因のひとつは、何をどう食べているか、です。
私たちの体は、細胞や血液が新しいものにつくり変えられることで、日々変化しています。
そのもとになるのが、“食べ物”です。
食生活の内容によって、人は健康にも、不健康にもなります。
そのことを物語る、面白いエピソードを紹介しましょう。
ブラジル南部のポルトアレグレ郊外に、20世紀前半に当地に移民した日本人が築いた村があり、
その子孫たちが暮らしています。
そこから車で数時間のところには同時期にイタリア移民が築いた村があり、
イタリア系の人たちが暮らしています。
2つの村は気候も土壌も同じような環境ですが、ひとつ、まったく異なる点があります。
それは“食生活”です。日系人の村では、移民当時から肉をたくさん食べる現地の食習慣になじみ、
動物性脂肪中心の食生活を送っています。
一方、イタリア系の村では、移民当時から自国の食文化を守り、トマトやルッコラなどの
野菜をたくさん栽培したり、イタリアから携えたブドウの木を植えて赤ワインを醸造したり、
自家製チーズを作ったりして、日々の食事にあてています。
この食生活の違いが、2つの村の健康度と寿命をはっきり分けています。
日系人の村では、中年期に心筋梗塞やガンになる人が多く、50〜60代で人生の幕を閉じていきます。
イタリア系の村では、健康なまま高年期を迎える人が多く、人生を謳歌しながら
80代や90代の長寿をまっとうしています。
日本は「寿命が長い国」として知られていますが、このエピソードが示すように、
民族固有の体質が長寿をもたらすのではなく、毎日の食生活が決定的なカギを握っています。
健康寿命を延ばすには、何をどう食べるかを知り、習慣化することがいちばんです。
“病気にならない”食生活を身につけることは、人生を楽しく、幸せに生き、長寿をまっとうする
大きなベースになるのです。
★ 健康寿命
平均寿命から重いケガや病気、要介護などの障害機関を差し引いた年数、
つまり、健康に暮らせる機関を指します。
2000年からWHO(世界保健機関)が、約200カ国を調査対象に「健康寿命世界ランキング」を
発表しており、日本はそのトップに位置しています。
しかし、日本の健康寿命と平均寿命との間には7年の差があり、それは要介護などの健康でない
期間の長さを表しています。
また、糖尿病、高血圧、糖質異常症、ガンなどの生活習慣病が急増していることから、
日本人の健康寿命は今後、急落するとの予想もあります。
★ 動物性脂肪
肉類やバターなどに含まれる脂肪を指し、脂肪酸の種類としては、飽和脂肪酸が多く含まれます。
飽和脂肪酸をとりすぎると、血中のコレステロールや中性脂肪が増え、
脂質異常やメタボリック・シンドローム、血管の老化である動脈硬化を進行させます。
健康を守るためには、とりすぎをひかえるほうがいい栄養素です。
「病気にならない人の食べるクスリの本 より」